夏の午後の光 | チガウカラー by Seedless

チガウカラー by Seedless

「色」をテーマに短くて抽象的なストーリーを紹介していきます。
光の角度によって違う輝きをみせる玉虫色のようなストーリー。
読む人の心の状態によって印象がかわり、決して完結しないため、結論は読み手がそれぞれの創造を膨らませて楽しめるように。

sunlight

夏の午後の強いアイボリーの光は過去の記憶と未来の記憶をつなぐ不思議な力をもっている。


ギラギラと照りつける元気な太陽のあつくなった水の中を歩いたあと。

熱を持った体がエアコンで急速に冷やされる大きな貝のビルの中。


海底から照り返すアイボリーの光がエスカレーターをあがる僕を後ろから照らす。

すると脳の半分が急に活動を開始する。


右かな?左?

いや、前方か?それとも後ろ?


とにかく脳内奥深くに潜んでいる遠い過去、近い過去、過ぎ去った時間の記憶のかたまり。

そのかたまりはライムの光に刺激されてその末端をどんどん進化させてゆく。

するとまだ見たこともない遠い未来の記憶が脳の一部を通じて姿をあらわす。

タイムスリップした映像は網膜の裏側に広がる。今僕の見ている景色に重なって。


レスカレーターをのぼりきってオフィスに戻るため今度はエレベーターの前に立つ。


記憶の進化の起爆剤になったアイボリーの光はもう僕をおいかけては来ない。


でも僕の目の前に飾られた黄色いサンゴの映像には僕の未来に見るであろう景色が重なっている。