チガウカラー by Seedless

チガウカラー by Seedless

「色」をテーマに短くて抽象的なストーリーを紹介していきます。
光の角度によって違う輝きをみせる玉虫色のようなストーリー。
読む人の心の状態によって印象がかわり、決して完結しないため、結論は読み手がそれぞれの創造を膨らませて楽しめるように。

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何かに意味や形があるかどうか


全てに意味を追えばそれに縛られる


何かに形を見出せばそれに縛られる


感じないこと


思わないこと


考えないこと


それが真理なのだとしたら?


きっと形や意味は必要なくなる


ゼロ


透明の世界



ああ、やってきた。この感じ、この感覚。


最近自分の中身が未来へ進んでいくのに平行して過去の中に残してきたものと交信を再び開始した。


昔好きだったこと、昔一生懸命になったものへの執着が再び甦る。


いつもにもまして一人の時間を大切にしたくなって外界との接触も必要最低限にとどめている。


今なにが起こっているのかは分かっている。 これから向かう新しい未来にむけての最終調整。


もう10年以上も時がたってしまったのに。


あの頃を思い出すのではなく、あの頃執着したものを今の等身大の自分で再検証している。


夢中になれるものが新しい興味が自分の内部から溢れ出すようになるであろう確信にちかい予感。


眠れない日が最近ずっと続いているのはそのせいだろうと思う。

ダニエルは可愛い。

普段は仲間うちでもリーダー格。

若いコ達も「すごいよな!」って感じで憧れているようだ。

ちょっとクールで感情表現が苦手。

でも彼の心はとても暖かくて広い。

背は私よりもずっとずっと高くて体も大きい。

私たちが共有する2人だけの秘密。

人は誰でも意外な一面を持っている。

それを知って驚いたり嬉しかったりがっかりしたり。

私は彼のその変身をどう思ったのかな?

驚きはあったものの、嬉しかったかな?

そういう特別な、他の誰も見た事のないダニエルを感じられて。

ダニエルは夜、女の子になるのだった。

ダニエルと寝る時、私は男の子になる。

彼の表情、そのリアクションは可憐な少女のよう。

しかけるのはいつも私。そして主導権もいつも私が握っている。

彼は夜、月のせいでも星のせいでもいいけれど、兎に角魔法にかかるのだ。

男女が逆というよりも男同士に近い感覚?なんていうとちょっと倒錯しているが。

私は他人に無遠慮に自分の中に踏み込まれるのが好きではない。

ダニエルも多分そう。彼には同じような雰囲気を感じで自然に近くなった。

運命として、出会ってしまった私達。必然的に。

多分彼が女でも男でも、多分私が男でも女でも。

多分2人が女でも、多分2人が男でも。

今と同じように私達は一緒に居て毎日一緒に寝るのだろうと思う。



berlin light

久しぶりの仲間と集って楽しいディナーの後、少しワインを飲みすぎたみたいで部屋に戻るとすぐにベッドへクラッシュした僕。飼い猫のジーノがないているいるのが遠くに聞こえる・・・。少しあけてあるベッドサイドの通りに面した窓からは外の喧騒がやっぱり遠くに聞こえる。目の裏には仲間の笑った顔、キャンドルのゴールドの光が映画のように映りゆく。体の中心が重く皮膚に向かって感覚は痺れていく。そしてシーツにくるまった体が溶けてゆくのをゆっくりと感じながら、どうやら僕はすっかりと眠りに落ちてしまったみたい。


どのくらい眠ったのかな?外はまだ暗くて時々車の通り過ぎる音が聞こえる。喉がかわいたな。そう思って体を起こし、キッチンへ立った僕。するとふと背中にぼんやりとした青い光を感じた。TVでもつけっぱなしになっていたのかな?と振り返ると、少し開いたバスルームからその青い光は漏れている。携帯電話?でもおきっぱなしにしてたのかな?でも、電話がなっている音はしない。


ジーノを呼んでみる。カウチの上で寝ていたジーノが眠そうな声でなきながら僕の足元にやってくる。


僕は寝ぼけた頭でバスルームに近づく。何も考えないで。 扉にてをかけて引いた瞬間、僕は体を乗り出して中をみた。バスルームの中はもう既にバスルームではなく深い青いひかりに満ちていた。海の青でもなくて、空の青でもない青。地平線もなにもみえない。光と沢山の青色のトーンが雲のように、波のように形を変えて僕を誘っている。恐怖感は全くなかった。じっと中を覗き込む僕の側にジーノがやってくる。大きく伸びをするとジーノは、すたすたと青いバスルームの中へ入って消えてしまった。「ジーノ!」僕はジーノを読んでみる。猫のなき声は聞こえない。


僕の心臓は好奇心でドキドキいう、眠気もなにも一気にふっとんでしまった。


ジーノの後を追って一歩青いバスルームに踏み出す僕。重心を青い空気の中に入った足にかけた瞬間僕の体は青いバスルームの中に向かって落ちていく。完全に僕の体すべてがその青の中に溶け込んだ瞬間、僕は水の中に浮いているような感覚でゆっくりとゆっくりと仰向けの状態でその青と光の中を漂いはじめる。僕はこの後に何が起こるのかへの期待で胸がいっぱい。元いた世界に戻れるかの不安より、これから起きるであろう冒険に心が躍る。たとえ行く先に、どんな危険が伴おうとも。

shell-blue







この街は昔2つに分断されていて、僕は西側の街で暮らしていたけれど、

東側の街にすごく近いエリアで生まれ育った。僕が20歳になった時、

街は統合されて僕達は自由にお互いの街を行き来出来るようになった。

悪友のライラと一緒に借りたアパートはとっても賑やかな三叉路を見下ろす

階段だけのビルの5階。古いビルだけど三叉路の真ん中に建った三角のビル

を僕達はものすごく気に入ったのだった。

マイラはゲイでドラッグクイーン、僕はクラブのブッキングマネージャー

をしながらレコード屋で働いたりしていた。それは、もう5年も前なんだ。

毎晩のクラブへの道は真ん丸に光るオレンジの街灯とその下に水玉のように

広がる明かりの中、車のヘッドライトも真ん丸だった。僕達は凍えそうな

寒さの中シャツ一枚の上に重い毛皮を羽織って肩を寄せ合って歩いてたっけ。

古い銀行跡のクラブのVIPルームはもともとの金庫室。中にいくつもある

鉄格子で仕切られた小部屋にカウチとテーブルがセットされていて僕達は

そこで毎晩のようにシャンペンを飲んでたよね。僕達の一番好きだった夜は

毎月最後の金曜日に起こってたダリオの夜。恋人を追いかけてニューヨーク

から引っ越してきたダリオは素晴らしいプロデューサーであり、DJ

今ではすっごい有名になっちゃって世界各国でDJしたりしてるダリオ。

僕が始めてニューヨークに行った時に共通の友達の紹介でダリオに出会った。

僕が滞在中泊まっていたその友達の家はダリオのアパートの上の階だった

から毎日のように顔を会わせてた。音楽を聴ききに行きたいという僕を当時の

サウンドファクトリーへ連れて行ってくれたのもダリオだった。ダリオのかける

音楽は、当時聴いてその温かさに心底僕が感動したフランキーナックルズに通じる

ものがあって僕は大好きなんだ。

夜明け、クラブからの帰り道にはよくライラと話してたっけ「どうして僕たち

って夜に聴く音楽をこんなに好きになっちゃったんだろうね?」って。そして

皆でうちに戻って午後2時までも続くアフターアワーズ・パーティー。たいてい

1人、また1人と居なくなったり眠り込んじゃったりしてくんだけど、最後の

1人になっちゃった時のちょっと切ないような淋しい感じ、今でもよく覚えてるな。 

次の日、二日酔いの頭を抱えてライラと2人で飲んだコーヒー。三叉路を見下ろす

リビングルームの大きな窓をあけて、そこに2人で座って紫色の綺麗な綺麗な夕焼け

を眺め続けてた。あの時はただただ赤やオレンジにたなびく雲と紫の空の素晴らしい

色彩に見とれてその空の先にいつかみつかる僕達のための場所を夢見てたっけ。

ライラは明日ノルウェーへ引っ越す。生涯の伴侶を得て彼とオスロで暮らすんだって。

僕は2年前から始めた広告の仕事の関係で来月ミラノに引越しをする。僕達2人の

たくさんの思い出が詰まったこのアパートとも明日でお別れ。家具や僕達の物が

なくなって広々と、でも寒々とした部屋。

僕とライラはやっぱり一緒に三叉路を見下ろす窓際に座って一緒にコーヒーを

飲んでいる。

paris sunset

よく行くカフェでいつも見かける人

この街に引っ越してきて2年たった

新しい職場で働き始めた

カフェはその職場のすぐそば

僕が新しい仕事についた最初の日そのカフェで

エスプレッソを飲んだ 

そして君をはじめてみた

君をずっとみつめていた僕の視線に気付いて

君は僕の方をみる

その目は不思議な目

君は僕をみているのに

その視線は僕をとおりすぎる

まるで僕がすきとおったガラスのように

初めて君と言葉を交わした

僕はちょっと背伸びをしてたかな

君はそんな僕に気がついたのだろうか

僕にとって仕事前に飲むカフェでの一杯の

エスプレッソが当たり前になった

君もいつからか僕がカフェに来る頃にカフェに

座っているようになった

時々カフェに君の姿がみえないと

僕はタバコを吸うふりをして外で君を待つ

通りの向こうからこちらに向かってくる君

その姿をみつけると僕は君が僕に気付くのを待つ

ほとんど毎日顔を合わせる君と僕

でも僕らの感じはとても透明

君のこと好きなのかな

君は僕の事が好きなのかな

ただ僕が今漠然と感じているのは

僕と君は一卵性の双子だったといってもいいくらい

心が近いってことかな

Espresso


sunlight

夏の午後の強いアイボリーの光は過去の記憶と未来の記憶をつなぐ不思議な力をもっている。


ギラギラと照りつける元気な太陽のあつくなった水の中を歩いたあと。

熱を持った体がエアコンで急速に冷やされる大きな貝のビルの中。


海底から照り返すアイボリーの光がエスカレーターをあがる僕を後ろから照らす。

すると脳の半分が急に活動を開始する。


右かな?左?

いや、前方か?それとも後ろ?


とにかく脳内奥深くに潜んでいる遠い過去、近い過去、過ぎ去った時間の記憶のかたまり。

そのかたまりはライムの光に刺激されてその末端をどんどん進化させてゆく。

するとまだ見たこともない遠い未来の記憶が脳の一部を通じて姿をあらわす。

タイムスリップした映像は網膜の裏側に広がる。今僕の見ている景色に重なって。


レスカレーターをのぼりきってオフィスに戻るため今度はエレベーターの前に立つ。


記憶の進化の起爆剤になったアイボリーの光はもう僕をおいかけては来ない。


でも僕の目の前に飾られた黄色いサンゴの映像には僕の未来に見るであろう景色が重なっている。









berlin sunset

独り立ちして以来、放浪癖のある僕は一つの町に長く住んだ事がない

今回しばらく住んでみる為に訪れた町はここが5つめ

でも、ここは僕の本当の町じゃない

僕はまたすぐに僕の本当の町を求めてここを旅立つだろう

いつからだったからだろう

まだ見たこともない町をとても懐かしく思い出すようになったのは

まだ眠りから完全に目覚めていない朝

朦朧としている意識の中であの町を思う

鳥の飛び立つ羽音と長く鳴り響く教会の鐘の音

カーテンを通してさしこむ暖かい太陽の光

やわらかい羽ぶとんの中に猫のように丸くなって訳もなく泣きたくなる

懐かしくて、そこへ帰りたくて、そこに帰ってきたことが嬉しくて

これまで住んだどの町でも時々僕が体験する不思議な感覚

まだ見たことも住んだ事もない町をどうしてこんなに懐かしく思うんだろう

一体いつから一体何度この不思議な感覚に出会っただろう

石畳の細い通りに面した古いアパートメントの3階が僕のお城

大きな木戸をあけるとらせん状の階段がみえる

ふるい石造りの階段をあがると僕の背の3倍はあるドアにたどりつく

それが僕のお城への入り口の扉

僕はその古い扉がとても気に入っている

バスに乗って隣町へ遠出をするとき

見慣れた町並みが急に赴きをかえて僕のあの懐かしい町を

思い出させることがある

確かに見ている町はいつもの僕の町なのに

そこにはもやがかかったように

トレーシングペーパーの上にかかれたような

あの町が重なって見えて

僕はまた泣きそうな気持ちで嬉しくなる

この町には一体いつまでいるのかな?

あの町には一体いつたどりつけるのかな?

年々あの懐かしい感覚は強くなってあの不思議な記憶が

現実の僕の生活にオーバーラップする時間が長くなっている気がする

僕は知っている

あの町に前より僕が近くなっていることを

あのとても懐かしい空の青

あの涙が出そうになる深いオレンジの夕焼け

そしてやっぱり長く長く鳴り響く教会の鐘の音

ナーノというあだ名の友達が昨日随分力をいれて語っていたこと。

人間の気高さについて最近気が付いたナーノなりの見解。 


人に対して真っ向から意見する人は大抵何かふっきれないものが自分の中に

あるんじゃないかって。

つまり自分自身が自分自身として落ち着いており、余裕がある場合、

他人の欠点、弱点に対する耐性があるって。


確かに、言われてみれば、○○すべきだとか、××が正しいとは誰が誰に言えるだろう?

それを口に出来る立場の人間が存在するとすればそれは家族かな?

無償の愛なるものがあるとするならば。

それは親の子供に対する無条件の愛だろうし・・・。


そうすると、親は自分の子供に対してとやかく言っても良いってこと?

たとえどんな結果が出ようと生きている限り子供の尻を拭くのは常に親であるわけだから。

親は自らの発言に対して常に責任を持つ事になる。

 

発言はそれを言い放った瞬間に言い放った人物がその責任を負う。


つまり、誰か他の人間の生き方、やり方、人生に説教するならば!

一生その人間の人生を背負うくらいの覚悟がないと言うべきではない!

ということ?


例えば、とにかくよく気が変る人がいる。

昨日は赤だったと思えば今日は黄色、

明日は青である。


こういう人を周りが理解するのはかなり難しい。


しかし、本人の中ではその思いの移行にはちゃんとした理由があり、

納得いく流れも存在する。

ただそれがあまりにも短期間に濃縮された状態で起こるため、

周囲はその流れ、変化を捉えることが出来ない。

でも結局すべては度合いこそ違えど、こういう事なのである。


自分自身が納得する事というのが一番重要なのだ。

数ある分かれ道、迷路のような人生をどのように歩み、どんな選択をし、

どこへ向かっていくのか、それを体系立てて見ることが出来、その文脈を

理解できるのはその人生を生きている本人のみなである。

たとえ親子であっても、夫婦であっても自分の人生は自分のもというのはこういう事だと。


こういうスタンスを持ち始めると回りへの関心、興味、注意が激減する。

そこにははっきりとした溝が生まれるのだ。 

この溝こそが気高さの正体なのではないかと私とナーノは思っている。

夏の遅い午後、汗を拭きながら山道を歩く私と弟。

私達は2人そろって長い事会っていない母を捜してこの山奥の村へやってきた。


7年も前から年に1度だけ2人に母から届くバースデーカード。

そこには差出人の住所はいつもなかった。


2人がここへやってきたのは母からのカードの消印と2人がある日見た夢のせい。

夏の暑い日曜日キッチンで方針状態の弟。

私も変な夢を見た後だったので彼と一緒にテーブルに座ってボーっとすること小一時間。


「俺、変な夢みちゃったよ。」と弟。

「私もなんか変な夢みた。」と私。

「お母さんの夢。」と2人同時に。


驚いて顔を見合わせた私達は詳しく夢について語り合う。

結果、2人が見た夢はまるで一緒に映画でもみたかのように同じもの。


2人で顔を見合わせてニッコリ笑い合うと私達は急いで身支度を整えた。

数時間後2人母からのカードを1枚と消印からたどった地域の地図を片手に駅にいた。


「それにしてもすごい田舎だなー。」と弟。

「お母さん、田舎好きだったもんね。」と私。


驚くべき事なのだが2人はただただ電車を乗り継いである村までやってきた。

行き先も降りるべき駅も全く知らないはずなのに2人はどこで降りるべきなのか分っていた。

それを2人して不思議がったりもしないくらい。

それは2人にとってそれくらい自然な事だったから。

感覚としては・・・

毎年夏に通った親類の田舎へ記憶をたよりにたどり着く感じ。


あぜ道、山道を抜けてちょっとした高台に出る。


2人は再び顔を見合わせる。

「もうすぐ、だよね。確かそこを曲がると・・・。白い・・・」

と言いながら小さなお寺の石垣を曲がる。


2人の脳裏に蘇る夢。


古い白壁の大きな日本家屋


田舎の深い山の奥の農家の風景。

山の際。

もしかしたら途中野菜畑があったかもしれない。

初めてやってくる土地なのにとても懐かしい感じがする。


古い白壁の大きな日本家屋。

弟と2人でその家にいると分かっている母を訪ねる。


引き戸の玄関をあけて、中に立つ母をみる。会話は覚えていない。

ただ2人が分かっている事はその家の中に一歩足を踏み入れたら最後もう外へは戻れないという事。

母の顔を見て、その日本家屋を後にする。

家をくるっとまわる格好でもと来た道を戻る二人。


母を心配している2人。

そのあたりの入り口のような場所へ2人で戻る。

私だけがやっぱり母の居る家へ戻ると引き返す。


夢と同じ白い家を見つけた。

いよいよだ。

白い家の門をくぐる。

白い家の玄関の前に立つ2人。

引き戸に手を。

ガラガラと音をたてて戸を開くとそこには懐かしい母の姿が。


一瞬真っ白な光が当たりを包んだ。

意識が遠くなっていく2人。


ふと気がつくとベッドの横の時計は午前10時。

今日も暑い日になりそうだ。


キッチンにいくと放心状態の弟。

私も変な夢を見た。